2019年5回目のフードロスの学校は、「ビジネスと幸福とフードロス」というタイトルでフードシェアアプリ「TABETE」を運営している株式会社コークッキング 代表の川越一磨さんにお話しいただきました。 フードロスの観点からも、スタートアップ企業としても、テレビや雑誌で引っ張りだこの川越さんのお話を聞くために、60名を超える参加者が集まりました。

 

 

フードロスの学校が目指すのは「食に希望が持てる社会」

 

 

いつも平井校長は、フードロスの学校は自前のフードロス論を持つための道具を手に入れる場であると話します。なぜなら、食に希望が持てる社会を作りたいから。そのためにフードロスの知識だけを詰め込んだり、何が悪くて何が良いという二元論に持っていったりするものではありません。実はグレーゾーンの多いフードロスや環境の問題。様々な分野の専門家・研究者の方々をゲストにお招きし、食や環境についてみんなでいっしょに考える場を作っていくのが目標なのです。

 

連続講座ではありますが、今回初めて参加の方もいるので、今までの4回分の講義のおさらいをした後は、今日のおやつの紹介。

 

 

今日のおやつ

 

 

 

第4回で登壇された宮林先生(東京農業大学教授)の出身県の特産品である長野のリンゴジャムと野沢菜漬け。それから、青森の訳ありリンゴです。ジャムは生食用として出荷できない青果を利用し、ロスを救う商品であることが多いのですね。そして、野沢菜を始めとする漬物は賞味期限が長く、ロスが出にくい食べ物です。訳ありリンゴは天候の影響で皮に傷ができたり、かすれができたりしたもの。味には全く影響がなく、おいしくいただくことができますよ。

 

 

ビジネスと幸福とフードロス

 

 

フードシェアアプリTABETEを運営するCoCooking代表の川越一磨さん。飲食業界に携わって8年になるそうです。そうする中でやはり、大量に捨てていることにもやもやし始めたんだとか。

 

といっても、啓蒙活動は大切ですが、ボランティアだったり、思いだけだったりでは、持続可能性がないことに気がつきます。もっとビジネスとしてフードロスを解決しようというところで、アプリTABETEを開発したとのことでした。

 

TABETEは登録した飲食店がその日に余ったメニューを登録。アプリ上でお知らせして、取りに行ける消費者がピックアップするもの。場合によっては、かなりお得に購入することもできます。

 

といっても、売れ残りを安売りするというスタンスではなく、消費者に「レスキュー」してもらう形を取っています。そうすると買い物しただけなのだけど、「ちょっと良いことした」みたいな気持ちに。そして、それはお店のブランドを守ることにもつながっているのだそう。

 

 

対談タイム TABETEの秘密に迫る!

 

 

ここからは川越さんと平井校長の対談タイム。みんなが気になっているであろうことを、平井校長が川越さんに聞いていきます。

 

Q:そもそも飲食店にフードロスの問題ってわかってもらえるの? チェーン店への営業ってTABETEできたりするの?

 

「飲食店には社会の流れを説明します。法律ができたことや、SDGsのようなグローバルな流れができつつあるので、大手やチェーン店からも問い合わせがあったりします。個人店がとにかく忙しいですし、売上を増やしたいだけの方にはなかなか難しいですね。でも中には廃棄に対して『もやもや』を持っている人もいるので、そういう方は感度が高いですね」

 

 

ここで、参加者の中に飲食店経営の方がいることが発覚。やはりロスは出てしまうとのこと。残ったものは、翌日以降のメニューに組み込めるようにしているそう。

 

「そうしたようにフードロスがそもそも出にくいようにしているお店もあります。個人店が多いですね。一方でチェーン店だと現場裁量が少ないので、ロスを救える状況でも救えないことが多いです。労働者としての自分としては、とっとと捨てて帰りたいわけですが、生活者としての自分としては『もったいない』と思っていて『もやもや』するんですよね」

 

 

 

Q:「食べ物の価格は相対的にもっと上がるべき」とおっしゃっていましたが、これはどんなこと?

 

「『価格のしわ寄せはどこへ行く?』ということなんです。現状では安いものから売れていっています。これは生産者にしわ寄せがいきます。そして、飲食店も労働時間が長いけれど、手取りが少ないですよね。そのメニューにどれだけの時間がかかっているのか? しっかり対応する価格を払うべきだと思っています。

 

TABETEは残りそうなものを提供するアプリですが、低価格を推奨していません。お店が自信をもってすすめられるものを出してくださいと言っています。例えば、白飯が余りそうということであれば、自慢のおかずをつけて価格調整してもらっていいんです」

 

某大手チェーン店がTABETEに参加することもチラリと話され、会場からはどよめきが! どこのお店なのかは、コークッキングのWEBサイトやTABETEをチェックしてみてくださいね。

 

 

 

ワークショップ「人と食のしあわせな形」ってなんだろう?

 

 

4~5名でグループワークをしていきます。はじめまして同士もいるので、まずは自己紹介から。そして、自分の考える「人と食のしあわせな形」について話し、他の人の考えを聞いていきます。

 

 

出てきた意見は付箋に記録して、模造紙にまとめていきます。時間が来たら発表タイム。

 

食を通して、他の人とつながるという感覚があると、食材に価値が乗るのではないか。それは1人で食べていても、1人ではないという意見も。そういうストーリーの積み重ねが、人と食の幸せの形につながるのかもしれません。

 

一方で、幸せの価値観が違うから、食の目的も異なってくるという意見も。食べない幸せということもあるのではないか? ということですね。

 

平井校長の目論見通り、いろいろな食の在り方について意見が出て、有意義なグループワークになったのでした。

 

 

 

質問タイム~競合他社をどう思っているの?

 

 

会場からの質問タイム。

 

「TABETEの持ち帰りの衛生面はどう担保しているの?」「TABETE以外のフードシェアアプリが出てきているけれど、競合他社との共存はどう考えていますか?」「貧困層がいる中で食の値段を上げるというのはどう考えるのでしょうか?」といった活発な質問が出ました。

 

川越さんの答えは、会場で聞いていた方だけの財産です!

 

誰と、いつ、どのように、どんな環境で、何を食べるのか、でおいしさは変わるという川越さん。おいしいストーリーを積み上げていく今後の取り組みが楽しみです。

 

 

2019-12-4